CXという言葉が近年注目を集めています。急速にデジタルが普及し、ユーザーとの接点が目まぐるしく変わる中で、ユーザーが得たい価値もまた変化しています。そうした時代背景もあり、このCXという概念がだんだん重要視されるようになってきました。
そこで、今回は聞いた事あるけど詳しく知らないという方の為に、CXについて理解していただき、みなさんのビジネスに落とし込んでもらえればと思います。
CXとは
まずはCXについて解説します。
Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略で、直訳すると顧客体験となります。顧客体験とは、商品やサービスを「知る時」「使う時」に感じる印象や使用感などのことを言います。
シャンプーで例えると、CMを見る、店頭で商品のポップを見る、ラベルなどを見る、そのシャンプーを購入して家で使う、詰め替えを買いに行く、詰め替える。これらの、商品とユーザーが接する場面において、その一つ一つの体験価値のことを指します。
CXって何をするの?
一般的にCXは、“高める”と表現されます。「ユーザーの興味が湧くような面白いCMをつくる」「ポップやラベルは、ユーザーの好みに合わせたデザインにする」「薬局やスーパー、ネットなど手軽に買える場所で販売をする」「使いやすさや詰め替えのしやすさなどを工夫する」など、これらはすべてCXを高める事例です。私たちは商品を日々使う中で、多くの接点を持ち、体験をしていることになります。
こういった、顧客体験一つ一つの価値を高めること。それがCXです。
CXはすでに出来ている?
ただし、体験の価値を高めることって当たり前ですし、デザインや製品などは既に顧客体験が向上するように工夫されている企業がほとんどだと思います。では、そのような企業は、「CXが既に出来ている」と考えていいのでしょうか?実は、ここに大きな落とし穴があります。
なぜCXが大事なのかというと、接点すべてにおいて体験価値を等しく向上させる事が非常に大切だということです。そして、それが非常に難しいのです。
例えば「CMを見てその商品が欲しいと思い、探したけれど売っていない」「ポップを見て購入したが、使用してみたらポップに書いてあることと違っていた」「雑誌で見たらおしゃれだったけれど、店頭で見たら意外と貧相だった」などなど…。こんな経験、ありませんか?
タッチポイントごとの体験価値を向上させることは部門内で質を高めていくしかありませんが、こういったタッチポイントで感じた印象や体験を損なうことなく、ユーザーが一貫して良い体験を得られるように、タッチポイントすべての顧客体験を見直し、顧客が体験に満足してもらっているかを横断的にディレクションすることがCXとなります。
タッチポイントごとの体験価値=各部門でクオリティ向上
タッチポイント全体の体験価値=CX視点で体験価値向上
CXを高めるメリット
説明を聞くと、結構大変そうと思われた方もいるかもしれません。ただ、ここで覚えておいてほしいのは、これが売上に直結するということです。
CXの目的は、ユーザーの接点ごとの満足度を高めるということです。それは、企業側からすると転換率の改善でもあります。そして、一人当たりの購買金額、LTV(生涯獲得価値)の向上に直結します。さらにそれは、周りに広めてくれる新規顧客の集客の施策にもなり得ます。
このように余りあるメリットがあることから、しっかりCXを理解し、常に顧客目線で横断的な体験価値をディレクションすることが大事です。その結果、顧客は次のステップに進みやすくなり、CXによって顧客の最大化、満足度の向上に貢献できます。
CX向上のポイント
横断的に捉えるために、まずは課題を見つけ出す必要があります。方法は3通りあります。
- 1. ユーザーに定量調査をする
- 定量調査で一番扱いやすいのは、アンケートです。トライアル、購入、定期購入などのタッチポイントでそれぞれアンケートを実施し、体験に満足しているかをチェックします。
- 2. ユーザーに定性調査をする
- タッチポイントごとに選抜したユーザーから、デプスインタビューなどで具体的にヒアリングをします。定量と違い統計ではないので、より具体的で感覚や趣味嗜好などのインサイトがわかる有効な手段です。ただし、見込み客にインタビューはなかなか難しい事が多いので、必然的に購入した方、定期購入している方に絞られます。
- 3. ユーザーと同じ体験をしてみる
- 自社商品を買おうと思う人はどんな課題を抱えているのかを定義し、その人物になりきって、購買行動を一から追体験してみるという手法です。
こういった手法を用いて、まずは何を不満と感じているかを徹底的に洗い出しましょう。
「CMの内容と、ランディングページのトーン&マナーが繋がっているかどうか」
「商品の入手先は、薬局とスーパーでいいのか」
「高級路線であれば、百貨店やセレクトショップなどの方がいいのか」
「ラベルは他社商品と並んだ時に手に取ってもらいやすいか」
このように、課題を洗い出すことで、ユーザーの立場になった時に一番良いデザインはどんなものか、商品を買える場所は適しているか、ポップ・CM・キャンペーンは機能しているかなど、「価格」「流通」「デザイン」「機能」すべてにおいて、トータルバランスで考えることができます。
CXOのすすめ
CXを高めるには、会社規模によっては専任の部門が必要なケースがあります。また、横断的に各部門に指示を出すので、一定の権限を持っている必要もあります。そのため、多くは社長が適役かと思いますが、CXにも専門的な知識が必要です。会社の経営と掛け持ちしてパフォーマンスを落とすのではなく、専門のCX部長を作るという選択肢も考える必要があります。このCXについての権限を持っている方を、CXO(Chief Experience Officer)と呼びます。
日本でCXOがいる企業はまだ少ないと思いますが、この先「体験価値」が重要視されていく時代において、CXOは重要なポジションになってくるでしょう。
デジタルの体験価値
CXを考える上で、デジタルは重要な要素です。リアルだけで完結させていた商品であっても、デジタルとの融合でユーザーに新しい顧客体験が生み出せることがあります。これらオフラインとオンラインを融合させたことを、OMO(Online Merges with Offline)マーケティングと呼びますが、これはCXの施策の一つとも言えます。
ネットでなんでも買える時代になりましたが、その昔ネットショッピングがなかった時代からすると、これは大きなCXと呼べます。在庫の数がリアルタイムでわかったり、価格が変動するものは、現在の価格がわかった方が便利という感覚が定着し、逆にリアルタイムでわからないことがストレスと感じるようになってきています。また、決済方法など買うまでの工数がいかに少ないかなど、UI、UXの観点もCXに入ってきます。
デジタル活用がどのように離脱を防ぎ、満足度を高め、継続的に購入や紹介をしてくれるのか、その辺りまで考える必要があります。
まとめ
ここまで解説してきましたが、CXは新しい概念でもなんでもなく、昔からビジネスで考えられていたことだと思います。しかし、言語化されるほど重要になってきたのは、デジタルの体験価値が「驚き」や「便利」から「当たり前」になるのと同じで、CXが当たり前になる時代が近づいているのではないかと思います。
やりたいことを何のストレスもない状態でスムーズに行えること。また、付加価値としてよりインタラクティブでセレンディピティな体験が求められていくことが当たり前となる時代。それなら、時代より早く答えを出していくことが大事だと感じています。
「つながるデザインで未来をカタチに」
私たち穂の国デザインでは、このCXを形にするために上記の言葉を掲げています。
私たちのデザインは、誰かと誰かをつなげるものだと考えています。 「挑戦したいこと」「困っていること」「伝えたいこと」を解決するお手伝いをし、お客様の理想の未来を形にすることを目指しています。