これからビジネスを加速させるために何が必要なのか考えた時、非常に重要なキーワードとして、「カスタマーサクセス」という言葉があります。今回はその意味と、企業としてどう活用すればいいのかということを解説していきます。
カスタマーサクセスとは
顧客が製品・サービスを使うことで成功し、望ましい結果を達成することを支援するビジネス方法である。カスタマーサクセス戦略が有効に働くと、顧客ロイヤリティを上げ、顧客離れを減らし、追加購入の機会を増やすことになる。 カスタマーサクセスの目標は、顧客を可能な限り成功させることであり、これにより、企業の顧客生涯価値(CLTV)が向上する。(wikipediaより)
難しく書いてありますが、要約すると「お客様を幸せにすると企業も利益を得られる」ということです。
カスタマーサクセス誕生の流れ
元々はパソコン上で使うソフトをパッケージ販売している企業が、パッケージ料金をもらっているけどそのサービスに満足しているのかわからないといった着想から、月額利用料をもらうだけでそのソフトが使えるというビジネスモデルに変化し、お客様が満足し続けていないと継続利用してもらえないビジネスというのが誕生しました。これをSaaS(Software as a service)と呼びます。
例えばNetflixなどの月額動画配信サービスや、Spotifyなどの月額音楽配信サービスは、利用者が価値を感じなくなればいつでも解約することができるので、企業が利益を得るには利用者に常に満足し続けてもらわないといけません。そういったビジネスモデルでは、このカスタマーサクセスという考え方が非常に大事で、企業存続の生命線とも言えます。
じゃあうちはSaaSモデルじゃないから関係ないんじゃないか?という疑問がある人もいるでしょう。でもそれは大きな間違いです。これまでのビジネスは、企業側の利益追求がメインでした。このようにビジネスを考えたことはありませんか?
「売り上げを上げるにはどうしたらいいのか」
「来店してもらうにはどうしたらいいのか」
「商品を手に取ってもらうにはどうしたらいいのか」
しかしカスタマーサクセスを用いると考え方はこうなります。
「お客様はどうなれば幸せなのか」
「その為に私たちは何ができるのか」
企業がこうしたいああしたいではなく、お客様が何をしたら幸せになるのか、どうしたらそれを実現できるのか、主語が企業からお客様に代わっていることが一番の違いです。
これからのビジネスにおいてカスタマーサクセスは必要不可欠です。ただしそれは理想論だ、という人もいるでしょう。カスタマーサクセスをもう少し補足するならこうなります。
「お客様を幸せにすると企業も利益を得られる仕組みにする」
これを実現させることがカスタマーサクセスの考え方です。
お客様を幸せにすることで企業が利益を得ることができる因果関係はすでに証明されています。貴方も値段以上の価値を感じる商品やサービスに出会ったことはありませんか?その一つ一つがカスタマーサクセスだということです。そしてそれを常に更新し続けていくことです。
1916年に書かれた渋沢栄一の「論語と算盤」という書籍がありますが、ここでも、”人として正しい生き方(論語)をして利益を得る(算盤)ことが商売である、論語と算盤は両立できる”、と言っています。カスタマーサクセスは”現在版の”論語と算盤”と言っても過言ではないと思います。
金銭のやり取りがあっても誰も幸せにならない”お金儲け”は継続していくことが非常に難しい時代になりました。お金を払ってもらう人が喜んでくれる、その見返りにお金をもらう、これは非常にシンプルで当たり前のことですが、ついつい忘れて”お金儲け”に走ってしまわないように、カスタマーサクセスをこれからのビジネスの中心に置いて事業拡大に活かしてもらえればと思います。
カスタマーサクセスを社内で実装するには
カスタマーサクセスの考え方は解説しましたが、業務に落とし込むにはどうしたらいいでしょうか?これには3つのポイントがありますので一つずつ説明します。
考え方を浸透させよう
カスタマーサクセスは理解できると非常に当たり前の考え方なのですが、理解できていない人からすると、なんで横文字?意識高い系?という認知フェーズの反発と、とはいえ会社の利益が大事でしょという理解フェーズでの反発があります。これにはじっくり時間をかけて社内に浸透させていくしかありませんが、効果的に進めるには社内でもある程度知っておいてほしい範囲に絞って意識共有をしそこでしっかりと考え方のすり合わせを行い、タイミングを見て社内全体に広めていくのがいいと思います。
各部門でのカスタマーサクセスを考えよう
社内にある程度理解できる人が揃ったら、各部署でカスタマーサクセスを実行するにはどうしたらいいのか話し合う時間が必要です。商品開発部であれば、現在の商品がどのような使われ方をしているのか、不都合を感じていないか、どうなったらいいと感じているかなど、商品のバージョンアップに役立つヒントがたくさん出てくるかもしれません。
例えばsmartスピーカーにアレクサで有名なアマゾンエコーがあります。部屋のどこにいても声をかけるだけで音楽が流せたり天気を教えてくたり、部屋の照明を暗くしたり空調も調整してくれます。でも最初売り出されたときは”音楽を聴く”ことしかできませんでした。しかもアマゾンが提供するアマゾンプライムミュージックの曲しか再生されませんでした。これは自社サービスを利用してほしい企業からすれば普通のことです。しかし「声だけで音楽を流したい」人の気持ちを満足させることはできましたが、「声だけで”自分の好きな”音楽を流したい」というニーズを満たしているとは言えません。
アマゾンは自社サービスを利用してほしいという企業利益追求の考え方ではなく、利用者がアマゾンエコーでどんなことがしたいのか、我々はそれにどう応えるかという問いに対して、競合他社の音楽配信サービスとも連携しいろんな音楽を提供するようになりました。 「お客様はどうなれば幸せなのか」「その為に私たちは何ができるのか」それを考えて改良された商品は受け入れられ、現在もアマゾンエコーはスマートスピーカー売上1位を独走しています。
プロダクトだけではなく、サービスを理解してもらう営業部門、サービスを補助輪なしで使えるようにサポートするオンボーディング部門、困りごとに対応してくれるカスタマーサポート部門にわけて、それぞれの部門で話し合うことで良い案が色々浮かんでくると思います。
社内にカスタマーサクセス部門を作ろう
上記の部門に加えて、カスタマーサポートの後に、カスタマーサクセス部門を設立することが大事です。カスタマサポートとの違いは、カスタマーサポートが困りごとに対応する受け身だとすると、カスタマーサクセス部門はサービスを価格以上の価値として活用してもらうための提案をする攻めの部門です。業務としては利用者が周りに推奨したいと考えているかをNPS(ネットプロモータースコア=紹介したい度)などを利用して調査したり、利用者から課題をヒアリングし最適なサービスの活用方法からアップセル、クロスセルまで含めて提案する、といった業務があります。そのあと営業機会が生まれれば営業部門にサポートしてもらうなどの連携を取っていくことで、LTV(生涯獲得単価)の拡大に繋がり企業の継続的な事業発展につながってきます。
「つながるデザインで未来をカタチに」
私たち穂の国デザインでもこのカスタマーサクセスを形にするために、上記の言葉を掲げています。 わたしたちのデザインは、誰かと誰かをつなげるものだと考えています。 「挑戦したいこと」「困っていること」「伝えたいこと」を解決するお手伝いをし、お客様の理想の未来を形にすることを目指しています。
”お客様を幸せにすることで、企業が利益を得る”
これが実現できる世界を作っていきましょう。