消費者を惹き付ける最大の武器!ストーリーテリングとは?②

2021.08.17
  • #Marketing

前回ご紹介したストーリーテリングを使った事例を紐解きながら、手法を構造化して効果的に使うにはどうしたらいいのか解説していきます。

前回の記事で紹介したストーリーテリングを使った動画はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=NDrK56UFOzw
特徴を解説した前回の記事はこちら

ストーリーテリングを実行していくポイント

① ストーリーは「ポジティブなマインド」が転機となる

いざストーリーテリングを取り入れようと思っても、まずはストーリーがないと意味がありません。ドラマのように架空のストーリーを作っていく場合はもちろん、営業やプレゼン、講演であればなおさら、語るべきストーリーは自ら生み出していく必要があります。

そのために必要なのはポジティブなマインドです。

決断を迫られた時の判断とその過程と結果、それがたとえ失敗だったとしても、そのすべてがストーリーになります。大事なのはその時上手くいったかではなく、どんな想いをもってそれを判断したか、そしてその時どんな行動をしたか、それには現状を良くしようとするポジティブなマインドが必要です。

逆境や困難、障害などを乗り換えていく過程や、苦悩や葛藤など精神的な悩みの解消などが具体的に表現されていることが一番の共感を生みます。

AmazonPrimeの動画では、おじいちゃんを亡くし一人暮らしをしているおばあちゃんを喜ばせたいと思った時が転機になっています。西野さんのスピーチでは失敗談を笑い話として聴衆の前で話しているところが転機となっています。

② 主人公を明確にする

ストーリーに共感してもらうには、主人公の気持ちがしっかり伝わることが大事です。

その際主人公は大きく分けて2パターンに分かれます。自分の話をすることが一番心に響くので、自分の話を自分の言葉で話す自分が主人公というパターンが一番分かりやすいかと思います。営業やプレゼン、講演などではこちらが基本になるかと思います。西野さんの例では言わずもがな、自分が主人公で話をしています。

Amazon PrimeであればAmazon Primeを使っている人、洗剤であれば洗濯をする主婦や主夫、おむつであればおむつを買う親、またペルソナを設定していればそれを持ち寄るのが一番良いでしょう。

③ 製品訴求はしない

プレゼンや動画などで一番やってしまうのが、製品の特徴やメリットなどを説明するシーンを入れてしまうことです。これはストーリーテリングを用いる趣旨とは全く違ってきます。主人公がどんな人物か理解する前に終わってしまっては意味がありませんし、それが逆に感情移入をする妨げになることもあります。製品の性能やメリットの紹介は一旦忘れましょう。その主人公の感情を視聴者に理解してもらえるシーンを挿入し、共感してもらうことを一番の目的とします。

Amazon Primeでは、スマホで注文できたり即日配達してくれることを全面に推した場合はただの製品訴求動画になってしまい、ここまで話題になることもなかったでしょう。

西野さんの動画も、失敗談を話さずに私も挑戦しているのでみんなも挑戦しましょう!といったところで共感は得られないでしょう。

④ 伝えることは主人公のベネフィット

主人公にいろんな過去や障害があっても最終的に幸せになったり悩みが解決するパターンが一番効果が高いです。この時主人公の感情の起伏をうまく表現することで、ユーザーは製品訴求とは比べ物にならないほどの価値を感じます。アメリカの大学では、製品のメリットを伝えた場合より製品のベネフィットを伝えた方が、売上が22倍も高くなる、という実験結果が発表されています。

このように、伝えたいことはユーザーがその製品を使った時に得られるベネフィットです。化粧品であれば、シミが消える、肌が綺麗に見えるはメリットであり、若く見られるようになった、恋人に可愛いって言ってもらえた、自分に自信を持つことができた、などがベネフィットになります。

Amazon Primeであれば手軽に注文できることや即日配送がメリットですが、一番伝えたいことは「浮かんだアイディアをすぐ形にして、大切な人を喜ばすことができた」、これが一番伝えたいベネフィットになっていました。このようにメリットではなくベネフィットが伝わるようにすることが一番大事です。

西野さんであれば、「失敗は存在しない、すきなだけ挑戦すればいい」というメッセージがベネフィットになります。あの場で絵本の紹介や映画の内容を話しても意味がありません。

もしあなたが経営者で自社製品を売りたいと思っても、この製品がどれだけ機能的か、どれだけ素晴らしいかについて話すことはストーリーテリングと呼べないでしょう。

大事なのはこの製品を作る為に、あなたがどれだけの高い壁を目のあたりにして、そこからどうやって乗り越えようと奮闘してきたか、その結果どんなベネフィットが得られる商品になったのかが知りたいのです。

⑤ トークは下げて上げる

ストーリーの流れはいろんなパターンがありますが、基本的には下げた後、上げると考えてもらえばいいかと思います。

❶【↘】… 下がる

❷【↗】… きっかけ

❸【↑】… 上がる

これが一番スタンダードな流れで、この抑揚に人は気持ちを揺さぶられる事が多いです。

例に上げたAmazon Primeでも、

❶【↘】おばあちゃん家に行かされる

❷【↘】出迎えてくれたおばあちゃんの身体があまり良くない

❸【↘】 おじいちゃんが亡くなって一人暮らしをしている

❹【↗】ふと見た写真でおばあちゃんを喜ばせる方法を思い付く

❺【↗】すぐに必要な商品を注文

❻【↗】翌日おばあちゃんに宅急便が届く

❼【↑】綺麗な景色の中を快走

❽【↑】おばあちゃんの被っているヘルメットは写真にあったものと同じ

という流れで、下がって、きっかけがあって、上がるという構成になっています。

西野さんの動画でも、

❶【↘】登場時にちょっとスベりました

❷【↘】ちょっと痛い相方がいますエピソード

❸【↘】 USJで友達とスベりましたエピソード

❹【↗】失敗談もネガティブな過去もネタにする笑い話になる

❺【↗】未来を変えるのは難しいけど、過去は変えられるんじゃないか

❻【↑】失敗しても失敗じゃないように、失敗の捉え方を変えよう

❼【↑】失敗は存在しない、すきなだけ挑戦すればいい

という、同様の構成になっています。

⑥ その他の事例

動画ではこういったストーリーテリングの使い方もあります。

https://www.youtube.com/watch?v=WmYaiFBDbEU

❶【↘】若かりし日の宮崎美子さんが恋人の前でビックマックを食べれなかった

❷【↗】おじいちゃんの前では全然平気だった、なんでだろ

❸【↑】孫「ビックマックがもう少し小さかったら、今の自分がいないかもしれない」

個人的には宮崎美子の若い時が可愛いので見てほしかったというのもありますが、それはさておいてもストーリーがここまで秀逸なのは珍しいんじゃないかと思います。これが製品訴求ならビックマックが大きいことを伝えればいいだけになりますが、このCMを見たあとはビックマックが大きくて良かったなんて感想よりももっと深い印象を持つでしょう。

またCMやスピーチではなく、テキストでもストーリーテリングを使っている事例があったのでご紹介します。

こちらは、キンドラー・ホール著の“心に刺さる「物語」の力”というストーリーテリングの重要性を解説した本です。この本の帯びにかいてあるランド・フィッシュキン氏の紹介文が、さすがストーリーテリングの本だけあるなと思いましたので紹介します。

「ぼくは読むものにはうるさい、ビジネス書にはとくに。でも、本書は1ページ目から夢中にさせられて、そのままやめられなかった。自分の顧客や自分のチームに刺激を与え、共感できるヴィジョンをつくりあげ、もっと効果的なマーケティングをしたいなら、読まないわけにはいかない」

──ランド・フィッシュキン(スパークトロ創設者)

❶【↘】ビジネス書にはうるさい

❷【↗】1ページ目から夢中、そのままやめられなかった

❸【↑】共感できるマーケティングをしたいなら読まないわけにはいかない

というストーリーテリングを短い文章で活用しています。

このように、ストーリーテリングは表現の場所を選ばず活用することができます。

まとめ

ストーリーテリングはこれまでの話の中で伝えている通り、通常の製品アピールや告知と違って、正しいことを伝えたりメリットを伝えることではなく、一番の目的は最大限の共感を得ることです。

そのためには、伝えたいという熱い気持ちがなければ始まりません。自分がその商品がどれだけ好きで、どれだけ人に勧めたいと思っているかという根本的な思い入れや愛着があるかどうかが非常に大事です。

それがないのに手法だけ取り入れても効果は出ないどころか、逆にマイナスになることもあるのでその点注意して下さい。

自分たちの想いや、感じてほしいベネフィットが明確なら、ストーリーテリングを効果的に使っていきましょう。

「つながるデザインで未来をカタチに」

わたしたちのストーリーはデザインに宿っています。

デザインが誰かと誰かをつなげるものだと考え、「挑戦したいこと」「困っていること」「伝えたいこと」を解決するお手伝いをし、お客様の理想の未来を形にすることを目指しています。

たとえシンプルでもそこにあるクリエイティブは、誰かのストーリーを形づくる大切な何かであり続けると確信しています。

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