エンジン車販売禁止方針から一転!ガソリン車やHVはこれからどうなる?

2023.04.07
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はじめに

2035年までにエンジン車の新車販売を禁止する方針を、EUが一転させたというニュースが注目を集めています。「エンジン車の販売禁止は決定事項じゃなかったの?」と思った方も多いのではないでしょうか。今回はエンジン車禁止を巡る一連の出来事について考えてみたいと思います。

これまでの流れ

これまでEUは、エンジン車の新車販売を2035年までに禁止する法案の決定を目指し、協議を進めてきました。日本国内では、エンジン車の販売禁止が確定したかのような報道も見られましたが、実際には欧州議会で可決された段階であり、最終承認を待っている状況でした。そして、EU加盟国の承認を得れば正式採用という段階で、自動車産業に強みを持つドイツが強く反対。さらに、このドイツの動きにイタリア、ポーランド、ブルガリアも賛同しました。ドイツはe-fuelを使用するエンジン車の販売を認めるよう求め、欧州委員会が押し切られる形で合意したのです。この反対の背景には、同国がこれまでe-fuelの開発に力を入れてきたことに加え、自動車生産関連の雇用が失われることへの懸念の声が強まっていたことが挙げられます。

これまで日本では、欧米中がEVを推進する中、日本のみがHVを容認する姿勢を取っているという対立軸で語られる場面もありましたが、実際はさらに複雑な状況であったことがわかります。

e-fuelとは

一連の流れを経て、例外的に認められることとなった「e-fuel(イーフューエル)」とは、合成燃料の一種です。CO2と水素を使って製造する合成燃料のうち、再生可能エネルギー由来の電力を利用して生産する水素(=グリーン水素)を用いて製造したものをe-fuelと呼びます。

e-fuelはガソリンと同様、燃焼時にCO2を排出しますが、製造時にCO2を使用するため、実質のCO2増加量はゼロとなります。さらに、従来のガソリン車等でそのまま燃料として使用できるという大きなメリットもあり、今後の活用に期待が高まっています。一方で実用化には課題も多く、現状の最も大きな課題は生産コストの高さです。

経済産業省の試算によれば、e-fuelの生産コストは1Lあたり300〜700円とされています。日本でも合成燃料の商用化を目指した取り組みが積極的に行われており、今後のe-fuelの動向に注目が集まっています。

EVの課題

冒頭で説明した通り、EUは合成燃料の使用を条件に、エンジン車の販売を容認することを決めました。とはいえ、エンジン車の販売禁止を支持する意見も根強く、EUが2021年に発表したCO2削減行動指針「フィット・フォー55」が撤回されていないことなどからも、EV化推進の大局が変わったと考えるのは難しいでしょう。走行時にCO2を排出しない自動車として、国内でも環境に優しいイメージが浸透しているEVですが、実は課題も多くあります。

●課題1 CO2の排出に関する課題
一つ目の課題は、EVのCO2排出に関する課題です。EVは走行時に排気ガスを出しませんが、EVを使用すればCO2が発生しないというわけではありません。EVの燃料である電気の多くは火力発電によるものであり、火力発電はその過程で多くのCO2を排出します。そのため、走行時のCO2排出量がゼロであるとは言えません。
さらにEVは、製造時にガソリン車よりも多くのCO2を排出すると言われています。
これらの点から、EVがカーボンニュートラルな自動車であるとは言えないのが現状です。EVでカーボンニュートラルの実現を目指すためには、製造過程や発電方法の課題を解決する必要があります。

●課題2 リチウムイオン電池に関する課題
二つ目の課題は、EVに搭載されるリチウムイオン電池に関する課題です。リチウムイオン電池には、リチウムやニッケルといったレアメタルが使用されています。EVの普及によりレアメタルの需要が急激に高まることで、供給不足や鉱山開発による環境問題、開発にあたる人員の人権問題など、様々な問題が発生する恐れがあります。さらにリチウムイオン電池には、レアメタルの他にもマンガンやコバルトといった土壌汚染や水質汚染の原因となる物質が多く含まれており、不適切な廃棄は環境汚染に直結します。

●課題3 リサイクルに関する課題
三つ目の課題は、EVのリサイクルに関する課題です。ガソリン車は自動車のリサイクル法に基づき、95%以上がリサイクルされています。対してEVは、リサイクルの技術や制度が整っておらず、適切にリサイクルされているとは言えないのが現状です。様々な企業がEVのリサイクル技術向上に努めていますが、確立には時間を要することが予想されます。

エコカーのこれから

HVに強みを持つ日本にとって、今回の一連の議論は非常に注目度の高いテーマでした。EV化推進の流れは今後も続いていくことが予想されますが、条件付きでエンジン車の販売が認められたことは、日本にとって追い風と見ることができるでしょう。EV、HV、ガソリン、e-fuel、それぞれにメリットがあり、課題があります。トヨタ自動車の豊田章男会長が、「カーボンニュートラルへの道はひとつではない」と強調するように、目標はカーボンニュートラルの達成であり、エンジン車の廃止ではないはずです。

EVやe-fuelのさらなる進歩や、HVの可能性の開拓、そしてまた新たな選択肢が増えていくことを期待しつつ、一人の消費者としてカーボンニュートラルにつながる選択ができるよう、今後の動向に注目していきたいと思います。

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